お知らせ

「地震が起きても被害は減らせるはず」

 

ご存知の通り日本は地震がとても多い国です。海外でも今年は2月にトルコ・シリア大地震が起き、日本では最近でも能登で震度5強をはじめとする群発地震が発生し、直後に千葉県木更津市でも震度5強を観測する地震が起きました。いつか多摩地区でも大きな揺れが起きるのではないかと心配になります。

 

さて巨大地震といえば、首都直下や南海トラフが注目されますが、プレート境界が近くにある日本では結局どこでも直下型の大地震が起こりうるわけです。よく言う断層についても、その場所は起きやすいということは言えますが、断層のないほかの場所が大丈夫というわけではありません。果たして、日本ではどれくらいの頻度で地震が起きているかご存知でしょうか?実は体に感じないようなものも含めると1ヶ月で2万回ほど、1日にすると500回から1000回も起きているのです。

先ほど、プレートとか断層とか、直下型とかという話を出しましたが、今更ですが地震ってなんでしょうか?地面が揺れることでしょうか?地震の本質は岩盤がある面に沿って割れることなのです。岩盤が割れることで、その結果として地面が揺れるのです。ニュースなどでよく震源地が「X」で示されます。あの「X」は割れ始めの場所です。そして岩盤が割れ続けている間は揺れが続きます。私たちはとかく揺れの程度を示す震度に着目しがちですが、特に大地震で大事なのは「強い揺れがどのくらい続いたか」になります。マグニチュード(M)は地震の規模を示す、などと言いますが、これは割れた岩盤面積の大きさから求めています。マグニチュードが大きいほど「強く」、そして「長く」揺れるということです。マグニチュードを体感でおおざっぱに示すと、「立っていられないような強い揺れ」が「10秒前後ならM7(直下型)、1分くらいならM8(津波)、3分くらいならM9(巨大津波)」とだいたいの予測ができます。揺れが長く続く→広い範囲で岩盤が割れている→規模が大きい→大きなマグニチュードと考えられるわけです。これは避難行動を考える目安としてとても大事です。

 

阪神・淡路大震災はM7.3でした。直下型の代表で、揺れは激しく大きな被害をもたらしました。現在では耐震基準や家庭内でのタンスなど倒れやすいものに気を付けることである程度被災を防げるようになります。一方でM7と予想される場合には通常、津波は起きません。しかし電車は止まってしまいますので、外出時はその日をどう過ごすか考えないといけません。もし立っていられないほどの揺れが1分続いた場合にはM8以上の可能性がありますので、津波発生の可能性があります。海の近くにいる場合には何はともあれ速やかに高い場所へ避難する必要があります。

 

防災について、もう一つ考えてほしいことがあります。それは学校での避難訓練です。学校では防災訓練として地震時の避難訓練が行われていると思います。みなさんもその時の様子を思い出してみてください。全員が揃っている授業時間に発生し、放送の合図が入り、そろって机の下に避難、そしてその後は校庭へ避難し、集合までの時間で評価されます。はたしてそれで良いのでしょうか?学校にいる時間は授業時間だけではありません。休み時間だったらどうか、給食の大きな鍋を運んでいる最中だったらどうか、あるいは一人でも転んで怪我をしたらどうなるのか、さらに複数の怪我人がでたらどう対応するのでしょうか?この訓練自体が成り立たない可能性のある出来事は数多くあります。既に日本の学校の99.6%の校舎は耐震化が済んでいて、諸外国の被害のように崩壊したケースはありません。

果たして校庭へ逃げることが正解なのでしょうか?考えることが多くありそうです。

 

令和5年6月発行 救急便り135号より

日本医科大学多摩永山病院 救命救急センター長  久野 将宗 先生