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めまいについて-問診のポイント-

 めまいを大きく分けると、「中枢性」と「末梢性」とに分かれます。前者の中には生命予後に関わる緊急性の高い疾患も含まれ、めまいといえども注意が必要です。以下に、めまいが中枢性であるか末梢性であるかを鑑別するポイントをお示しします。めまいの診断には、実は問診が大変重要です。

まず、問診にて以下の①~⑥を確認します。
①   意識障害
②   これまでにない激しい頭痛
③   一側の顔面・上下肢の痺れ
④   眼前暗黒感
⑤   ろれつ障害
⑥   複視の有無

これらのうち一つでも該当するものがあれば「中枢性めまい」を疑います。
①、④は心原性の可能性もあります。小脳出血等の疑いがあれば直ちに脳神経外科へ、不整脈が疑わしければ循環器科への紹介を検討します。
①~⑥がなければ、末梢前庭障害によるめまいかどうかを問診にて予測します。「末梢前庭障害によるめまい」の鑑別の第一歩は、「一側性の難聴・耳鳴・耳閉塞感」といった「耳症状の急性発症」の有無の確認です。これまでに経験したことがない重い一側性難聴が生じ、めまいで嘔吐が継続するといったケースの場合は、「重症型突発性難聴」を疑います。生命予後に関わる疾患ではないとはいえ、一日も早い治療が望ましく、殆どの場合緊急入院が必要な救急疾患です。

一側性の耳症状とともにめまいが出現した場合でも、もし問診で過去にも耳症状とめまいがセットになって反復していたことが判明した場合には、「メニエール病」を疑います。やはり早めの耳鼻咽喉科受診が推奨されます。

耳症状がないめまいの場合、起床時や寝返りを打った時等、頭位が変わることに伴って回転性のめまいが誘発され、頭位の変換で回転方向が逆転するような「良性発作性頭位眩暈症」が最も疑われます。病巣半規管の特定とそれに応じた浮遊耳石置換法をお受けになることをお勧めします。

耳症状がなく、頭位変換によって回転方向の逆転もない場合は「前庭神経炎」を疑います。感冒罹患後の発症が特徴的です。ご多忙な診察の折にめまいの患者さんが受診した際、本稿が少しでもお役に立てましたら幸甚です。

令和2年12月発行 救急便り125号より
橋本耳鼻咽喉科 橋本 循一 先生