お知らせ

冬場の胃腸炎

 冬になるとインフルエンザとともに感染性胃腸炎が増加します。感染性胃腸炎には細菌性胃腸炎とウイルス性胃腸炎がありますが、冬場に増えるのはウイルス性胃腸炎でノロウイルス感染症とロタウイルス感染症が大多数を占めます。
感染経路
 ウイルスが口から入ることにより起こる経口感染で、ノロウイルスは感染者の糞便や吐しゃ物、またこれらで汚染されたものに触れた手から感染します。汚染されたカキなどの二枚貝を十分過熱しないまま食べると感染することもあります。ロタウイルスも糞便や吐しゃ物から感染します。
症状
潜伏期間は24~48時間前後と比較的短く、下痢、嘔吐、腹痛、発熱がおもな症状です。ロタウイルスでは米のとぎ汁のような白い便が特徴ですが、健康な成人の場合は感染しても倦怠感、吐き気などの軽い症状にとどまるのが一般的です。ノロウイルスでは2~3日、ロタウイルスでは1週間位で自然に軽快しますが、高齢者の場合は誤嚥性肺炎を引き起こして重症化することもあるので注意が必要です。
診断
何れも迅速診断キットがありますが、ノロウイルスでは保険適応は3歳未満、65歳以上などに限られています。
治療
ノロウイルス、ロタウイルスに有効な薬はありません(ウイルス感染には抗菌剤は無効です)。補液(水分補給)が治療の中心となります。重症の場合は入院して点滴することもありますが通常は経口補液(口からの水分補給)で十分です。市販の経口補液等を利用しますが、大事なのはなるべくゆっくり少量ずつ飲むことです。胃液をはじめとする消化液は毎日約10リットル分泌され小腸で8リットル、大腸で2リットル吸収されます。大量に分泌し大量に吸収するという作業が体内で日常的に行われているわけですが、ウイルスなどにより胃腸炎を起こすと小腸での水分吸収が阻害され下痢になります。従って胃腸炎の時は何も口にしなくても腸の中は過剰な消化液が充満していて、水でも普通に飲むと下痢をするので少しずつ飲むことが大切になります。
感染対策
 感染力が極めて高いので吐しゃ物の処理に注意が必要です。必ず手袋をして吐しゃ物を拭き取り、床、ドアノブなどを次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。
汚染されたカキなどを十分過熱しないまま食べると感染するので、汚染されている可能性がある場合は85度以上で1分間以上加熱する必要があります。ウイルス性胃腸炎は乳幼児、高齢者では重症化し致命的になることもありうるので、健康な人も手洗い励行などで感染を避け自らが感染源にならないように心掛けましょう。

平成29年12月発行 救急だより113号より
やはの内科胃腸科クリニック 院長 矢羽野 壮光