お知らせ

~認知症と救急医療~

国の試算では、認知症のある方は2025年には約700万人にのぼるとされています。認知症高齢者は2012年で全国に約462万人とされており、約10年で1.5倍、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症になる計算です。

認知症のある方ではひとりで出かけたあと帰り道が分からなくなり、いわゆる徘徊(はいかい)の状態になることがあります。認知症による徘徊で行方不明になる方は、年間1万人を超えています。徘徊により、骨折、交通事故、鉄道(踏切)事故が増え、冬場には凍死の危険もあります。いずれも救急医療の対象となります。

徘徊への対応には、限界があります。家族が24時間見張り続けるのは不可能ですので、行方不明の時間をできるだけ短くすることが、徘徊による事故を防ぐための現実的な対応でしょう。

行方不明対策の第一は名前、連絡先など記入したネームプレートを携帯してもらうこと。ネックレスタイプのものが市販されていますが、ネックレスをつける習慣のない方は外してしまうので注意が必要です。財布などご本人が必ず持ち歩くものに入れるか、すべての服に記入するのもひとつの方法です。

多摩市では「多摩市高齢者行方不明情報メール」と「徘徊高齢者等探索サービス」を行っています。

「多摩市高齢者行方不明情報メール」は行方不明の方の特徴を市役所高齢支援課に連絡すると、多摩市公式ツイッターとメール配信により登録したメンバーに情報が届くシステムです。徘徊を繰り返す方は、事前に地域包括支援センターで登録しておくと速やかに情報配信ができます。

「徘徊高齢者等探索サービス」は小型の発信機「みまもりタグ」を利用者(徘徊する方)が携帯することにより、家庭からの連絡により位置情報を知らせてくれます(月額500円)。ちなみに「みまもりタグ」が収納できる専用靴を無償で貸し出してくれるようです。

前者はメールやSNSを利用してはいますが、いわば人相書きによる捜索の現代版でどちらかというとローテク。後者はGPSを用いたハイテク捜索で、普及すれば「徘徊」の概念を変えてくのではないでしょうか。

平成29年9月発行 救急便り112号より
中村内科医院 院長 中村 弘之